■ミホノブルボンの調教師
昔、競馬の世界に戸山為夫という調教師がいた。30代で騎手から調教師に転向すると、36歳の若さで管理馬タニノハローモアがダービーを勝つ。馬に負荷をかけて強くするというやり方を徹底し、栗東トレーニングセンターに坂路ができると最大限に活用して、1992年ミホノブルボンでダービーを勝つことになる。血統的にはとても長い距離には耐えられない馬を、調教で耐えられるようにさせた。
もちろん負荷をかける功罪はある。ハードな練習に耐えられず、故障が原因で引退を余儀なくされるケースが多く出た。この評判が悪評となってついて回り、高い馬は回ってこず、安く売買される馬しか回ってこなくなる。しかし、それでも調教で手を抜くことなくハードな調教を重ねた結果、誕生したのがミホノブルボンだった。日本人は何かとスポ根を気に入るが、ミホノブルボンはまさにスポ根を体現した馬だったと言える。
そして、戸山為夫はミホノブルボンですべての気力体力を使い果たしたかのごとく、1993年に61年の生涯を閉じることになる。亡くなった翌月に出された「鍛えて最強馬を作る – ミホノブルボンはなぜ名馬になれたのか」は、病床に臥せていた時期に執筆を始めた本だ。もはや長くないことを理解し、自分の集大成を本にまとめた。
戸山為夫が坂路を活用するまで、坂路を有効活用していた厩舎は少なかった。しかし、今では坂路調教が馬を鍛える一番の方法となる。栗東の馬が競馬界を席巻し、美浦の馬が大苦戦をした時期、関西でのレースに出るため何週間も前に関東馬が遠征して栗東坂路を活用して結果を出す「栗東留学」も流行った。鍛えればどうにかなる、それはまるでダビスタのようでありながら、ダビスタと同じ感覚では到底できない業でもある。
■臨機応変ができていない「日向坂厩舎」
日向坂46はどちらかといえば戸山為夫方式なところがある。元々1期生は48グループ・坂道グループに先んじてSHOWROOM審査が行われるほか、永遠に昇格できない欅坂46の控え的なポジションを余儀なくされた。いわば安い馬扱いである。ゆえに何とか這い上がろうと調教に調教を重ねていき、それが2019年日向坂46の誕生で花開くことになる。2期生も状況的にはさほど変わらないようにみえるが、実は血統のいい馬が多い。
現在の競馬界は育成レベルでの調教技術の進化もあり、以前のように厩舎で鍛えていくことはあまりしない。ある程度の仕上げは外部で行い、あらかた完成したら最後の調整をかけるに過ぎない。昔はレースを使って仕上げることが多かったが、今ではぶっつけ本番でも100%のパフォーマンスができる。2022年の皐月賞はドウデュースが昔ながらの王道ローテでダービーを制したが、これが少数派である。弥生賞やスプリングステークスのステップレースが機能しなくなるのもそう遠い未来ではないだろう。
日向坂46の2期生は9人いるが、このうち4人が何かしらの休養を余儀なくされた。先日宮田愛萌はブログで、「私の疾患は、すぐに治るものではありません」と書いている。病名は明らかになっていないが、筋肉系の疾病があるのではないかと噂されており、だとすれば、大変である。馬に例えるなら脚部不安を抱え、屈腱炎から復活したようなものである。いつ再発してもおかしくない恐怖は競馬に携わる人ならばわかる。
小坂菜緒も先日のTIFで出演を回避しているが、小坂菜緒も先日なんとか復帰したばかり。1年近い休み明けだが、現状では休み休みの状況である。松田好花は目の病気で数カ月休養、濱岸ひよりは半年以上の休養と「故障」を経験している。その点、1期生は影山優佳が東大受験のために休養したぐらいである。その影山優佳も体調を崩し、東大受験すらかなわった時期もあったと先日語っている。
以前日向坂で会いましょうのヒット祈願で、チアリーディングの企画を行い、そこから小坂菜緒の体調が崩れていき、結果的に休養に追い込まれたのではないかと考えを述べた。この手の根性系が日向坂46に多く、それで鍛えられた部分もあったわけだが、結果的に多くの故障者を出した。1期生が出す根性に2期生が食らいつき、その結果、故障者がたくさん出た。避けられる事態といっても過言ではない。少なくとも小坂菜緒に関しては。
故障者が多発してからは運営はできる限りセーブするようになったように感じる。個々に合わせてセーブを行うことは進歩とはいえるが、犠牲があってからでは遅すぎる。頑張る時に頑張らなきゃダメなのは社会人として当然ではあるが、壊れてしまっては何の意味も持たない。競走馬はレースに出られなければ1円も稼げなくなるように。
■小坂菜緒は脚部不安を抱える良血馬
小坂菜緒を見ていると、色々な危うさを感じる。美人薄命ではないが、粗雑に扱えば簡単に壊れてしまうような飴細工的な美しさがある。本当は慎重に大切に扱うべきなのに、これでもか!これでもか!と重労働を強いる。坂道グループや48グループのセンターでここまでこき使われたセンターはいるだろうか。
例えが古くて申し訳ないが、スーパージョッキーの熱湯コマーシャルで高確率で「殿」のところに止まっていたら、もはや見てられない。アイドルの水泳大会でポロリ要員では全くない一線級のアイドルが頻繁にポロリをしていたら、ありがたみも何もあったものではない。水戸黄門だって、頻繁に印籠が出てこられたら飽きられる。ここぞで殿に止まり、ここぞでポロリしかけて、ここぞで印籠を出すから興味を惹くわけである。
ヒット祈願だって全員で行く必要はない。日向坂46は全員野球が売りなのは百も承知だが、代償を払ってまで参加するようなことではない。そんなことで何かあるならそのメンバーが弱いだけだと思う方は、単にクズな部分をお持ちの方なのだろう。小坂菜緒はいわば脚部不安を抱えた良血馬であって、決して鉄人ではない。鉄人には鉄人の働き方があり、小坂菜緒には小坂菜緒の働き方がある。
脚部不安を抱えている馬は慎重に調教が行われ、厩務員からの入念なケアが入り、レースが終われば牧場に戻される。小坂菜緒も同じようなことをやればいい。入念なケアとたっぷりとした休養を織り交ぜながら使っていくしかない。これが特別扱いだと憤慨する人はいるかもしれない。しかし、小坂菜緒のような透明感と飴細工のような危うさを持つ人は特別扱いされるべきであり、そのような資質がなかったことを悔いるほかないのではないか。
自分自身が特定のアイドルの特別扱いが大嫌いで、あいつらにも嫌な仕事を振っていけよと思ったことは一度や二度ではない。日向坂に対してはそもそも1度もそんな嫌な感情を持ったことはないわけだが、そんな自分がなぜ小坂菜緒への特別扱いを是とするか、早い話が適材適所の大切さを知ったからだろう。
■小坂菜緒はもう1度輝きを見せられるのかt4
現状の小坂菜緒を見ると、まだまだ本調子とは言い難く、一昔前の競走馬のように1回レースを使って上積みを図っている段階である。本人が何の病気で休養したかはこちらが推測するしかなく、それについての言及は控えるが、時間がかかりそうな雰囲気を感じる。日向坂46はそろそろ卒業ラッシュに突入する時期に入るわけで、そのラッシュまでには輝きを取り戻しておかないと自らがラッシュに飛び込むことになる。それが日向坂46にとって最悪である。
4期生が入ってくるのはそろそろ。その4期生に輝いた姿を見せておかないと色々とまずい。そのためには慎重に扱い、本調子に少しでも戻すしかないのだが、果たしてそこまで戻るだろうか。大変書きにくいが、小坂菜緒に取って代わるようなスター性を持つメンバーはいない。4期生から出てくるかもしれないが、その場合でも輝いた姿は見せなければならない。それが最後のご奉公になるのだとすれば、それでいいのではないか。
個人的な推測をする限りは相当ギリギリのところで持ちこたえているように見え、これ以上高望みはできない。痛みに耐えてよく頑張った!感動した!おめでとう!と時の首相小泉純一郎に言ってもらい、最後の最後で輝いた貴乃花のように、最後の輝きを見せる時である。4期生のスター候補たちに帝王学を教えられるのは小坂菜緒しかいない。

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